口先介入の恐怖

NYの為替市場で「口先介入」により、円が全面安となり、ドルは8週間ぶりに高値から下落した。口先介入したのは日本の杉本和行財務事務次官である。定例会見で「為替相場の過度な変動は経済・金融の安定に悪い影響を及ぼし、好ましくない。当面は景気の回復を優先する」と発信したものである。円相場は、米国証券のリーマンが破綻した08年9月から9・2%も上昇していた。世界的な金融危機の中で安全資産への逃避先として円が買われたのが要因である。為替の変動は巨大資金を運用する為替ディーラー達にとっては極めてリスクの大きいものである。単なる口先介入ごときで大きく変動するはずはない――と、一般には考えられがちだが、為替ディーラーたちは、歴史的にその怖さを十分に経験しているのだ。何しろ、相手は国の財務を担当する事務次官である。この口先介入の意味は、「これ以上円を買い続けると、日本が本気で円を売り浴びせるぞ」という脅しである。何しろ国がバックについているわけだからロットの大きさは巨大なものだ。まず、彼らが束になって掛かってきても勝てるものではない。実際、為替市場では過去に何度となくこの様なケースを経て、現実に実弾を投入(円売り介入)され、為替ディーラーたちが巨大な損失を受け、多くのディーラーの首が飛んだ経緯がある。日本の輸出企業は今、世界的な売上高の減少に見舞われ、円高の影響で2重苦の下にある。投機行為で円高を演出されてはかなわない。今回の口先介入の真意はここにある。当分は彼らも大人しくなるだろう。トレンドも円安の方向に向かうものと見られる。